のぞみ

名古屋からの復路は、品川までノンストップの「のぞみ」だった。
朝は「72分遅れです」とかいうアナウンスが入り、つまり僕の乗る予定だった「ひかり」は当然72分遅れているわけで、小田原駅には「こだま」しか来なくて、どんどん抜いていく「ひかり」や「のぞみ」を恨めしく思いながら、静岡でやっと「ひかり」に乗り継いで名古屋まで2時間近くかけてやってきたというのに、帰りは驚くべきことに時刻表通りの運行になっており、品川まで90分くらい。すごいぜJR!
新幹線とか飛行機とかって、昔はあまり好きではなかったのだけれど、最近はちょっと違う。もちろん、僕は今でも「旅は遅いほうがいい」と思っている。だから、自転車で旅をするし、信州へいくときは絶対に各駅停車だ。途中をぶっ飛ばして目的地に着こうとするのは現代人のつまらない性で、絶対に途中で、いろいろな人と出会いながら、その土地々々の言葉とか空気とか、そういったものを感じながら進んだほうがいい旅になると、そう思っている。だいたい、途中経過をぶっ飛ばして結論だけを出す、というのは理系の人間としては恥ずべき行いじゃないか (笑)。
昔、我が信州を代表する映画監督である降旗さんが、「駅はジャンプ台なんですよ」といっていたのを、すごく鮮明に覚えている。毎日使う駅だけど、でも、プラットフォームに立っているときに手にしているのが、学校へいく定期券じゃなくて、ある日、東京行きの切符になったりするんだ。毎日通る場所だけど、そこは、突然ジャンプ台になったりする。そして、各駅停車の車内で過ごす時間というのは、忙しい都会との時差を埋めてくれたり、自分と向きあっていろいろなことを考えたり、そういう大切な時間なんだ、と思う。移動をする時間は、決して無駄なものでも、つまらないものでもない。
でもね、やっぱり「今すぐ帰りたい!」と思うことはあるんだ。
そういう時に「スーパーあずさ」に乗って中央線を下るのと同じで、新幹線や羽田行きの飛行機に乗ったときに、あー、これであとは寝てても帰れるんだ、と、安心できるのは、とてもありがたい。
でも、どうか、僕が生きている間は、中央線と飯田線だけは、なくなりませんように。

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