ゲノム微生物学会 Mar.06 / oral session 2

メタゲノムのセッション。
[ 8: 原油 n-アルカンの多様性と原油由来 DNA から推定される微生物集団のプロファイリング ]
原油から DNA を抽出して、もともとの生物を調べたい。
地球上の炭素のうち、生物がサイクルしているのはほんの一部で、その一部が石油になったりする。
原油のなかには原油を分解する菌とかも入っちゃうので、その中から大昔のゲノムを抽出するのは難しい。
原油は産出場所によって、アスファルト含有量とか粘土といった性質が違う。n-アルカンの diversity はその一つ。
中東産 (3種類例がでてた) のものはほぼ均一。日本や中国の原油はそれぞれ違う。
iso-octane で沈殿させて、泥のようなものがたまったところから DNA 抽出キットで DNA を拾う (菌そのものを拾って培養するわけじゃなくて、配列だけ拾う)。
16S rRNA から菌種を推定。アルカンを分解する菌、芳香族を分解する菌などが出てくるが、シアノバクテリアや耐熱性の菌などが出てくる上に、産地でそれぞれまったく異なった population になる。
世界中の原油から出てくる菌は石油の精製に関わっている?
中国の砂漠とか台湾の山とか、ヨルダンの温泉からとったシアノバクテリアに類似する rRNA が出てきたりしてる。
なんかすげーなー。
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原油を微生物が作った、と証明している人はいないから、まず菌をとって、石油ができるところを証明しないといけないのでは? → おっしゃる通りですが、それは無理だと思うわけで、いまのやりかたでできることもあると思う。
真核生物といっしょにいる可能性の高い共生 (あるいは病原) 微生物に偏っているとか、そういうことはある? → まだ何もわかっていません。
PCR プライマー的に古細菌などはみている? → 1種類しか見つかっていませんが、見てはいます。
炭化水素の代謝とかは? → メタゲノムなのでぜひやりたいが、なにぶん収量が少ないので。
[ 9: 偽遺伝子が明らかにしたシロアリ腸内共生未培養新門細菌の適応進化 ]
シロアリの腸には6万の原生生物と1千万の腸内細菌!
これらが木材のセルロースを分解したり、窒素固定をして窒素を補ったりする (いくら木を食べても、タンパク質不足なので)。
でも、ほとんどが培養されていないので何をしているかわからない。
Trichonympha agilis という原生生物が重要。で、こいつは中に細菌をたくさん飼っている (新門である Termite Group 1: TG1)。Trichonympha も TG1 も培養できないが、たくさんとってきて TG1 細菌 Rs-D17 の環状ゲノムを決定した。こいつは 121 個の偽遺伝子を持っている! 偽遺伝子があるので、細胞内共生の様子を探ることができる。ゲノム長は 1.1Mbp
偽遺伝子はおもに DNA 修復、細胞壁合成、トランスポート、defense など。環境応答系はそもそも遺伝子が欠落している。
dnaA (染色体複製開始因子) が pseudogene になっている!
同じように dnaA が欠損しているのが、昆虫の細胞で共生する奴らなので、どうやらそういう関係にあると dnaA が欠落するらしい。recA などの recombination 系を使ってなんとか複製している、といわれている。
ペプチドグリカン合成系 (細胞壁つくる) はほぼ残っているように見えたが、ほとんどが偽遺伝化している。偽遺伝子で残っているということは、共生し始めてそれほど時間がたっていない?
制限酵素遺伝子群は26セットもあるけど、2セットを除いてほとんど偽遺伝子になっているか、認識ユニットだけで制限酵素ユニットが落ちている。
CRISPR システムを持っているから、ファージの攻撃が多い環境だった?
アミノ酸合成や補因子合成の遺伝子は生きているので、シロアリにアミノ酸や補因子を供給する役割を果たしている?
偽遺伝子になるか欠落するかはどう違うの? → よくわからないんだけど、いらなくなって deletion しようと思っても、修復系の遺伝子がまだ生きているとけっこう残っちゃうのかな、と。
高等シロアリには、共生原生生物はいない (細菌はいるけど)
[ 10: シロアリ共生原生生物のメタトランスクリプトーム解析 ]
嫌気性の奴らが多く、培養は大変。材料はオオシロアリ。
原生生物は Parabasalia と Oxymonadida が主。これらをまとめて EST 解析。
total RNA から rRNA を抽出して構成生物種を解析。
mRNA だけを抽出して、完全長 cDNA library を作成。平均 573bp, 合計 140Mbp.
micro manipulator を使って特定の原生生物の細胞をとり、cDNA library をつくることもやってみた。
actin, alpha/beta-tublin など、代表的な遺伝子をしらべてみると、かなり diversity が大きい。
木質分解酵素の種類やタイプも、原生生物ごとに異なる。
結晶性・非結晶性セルロースの分解系がかなり発現している。こいつらはカビ・キノコのセルラーゼと違って、セルロースへの binding site をもっていない。
メタゲノム的には何かやってない? → どうしても細菌と (ゲノムサイズの大きな) 原生生物が混じっちゃうので、まだやってません。
[ 11: 持続可能型社会への貢献遺伝子データベース ”膨大な環境由来メタゲノム配列からの有用遺伝子探索” ]
メタゲノム配列からの有用遺伝子探索。
長浜バイオ大の人のスライドっていつもこんな感じな気がする。
自分の学生がやったら怒るけど、でも、これはこれでけっこう好き。
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メタゲノムでみつけた遺伝子の大半は機能注釈がついていない。これを、
– 学生にテーマをみつけさせて
– Swiss-Prot とかで関係する遺伝子をみつけさせ
– それに近いメタゲノムな遺伝子を blast で釣ってくる (もちろん、ほかにも curation のプロセスを踏んでいる)
といった感じでデータベースに登録していく。
[ 12: メタゲノムからの未知有用遺伝子スクリーニング法の開発 ]
– 活性ベース: クローンを作って、酵素活性でスクリーニング
– 配列ベース: 酵素の配列をもとに選抜し、実際に発現させる
– SIGEX (Substrate Induced Gene Expression): 酵素活性をはかるのではなく、プロモータが on になるかを (GFP とかで) 見て釣ってくる。かっこいい。でも、ウソなのを引いて来ちゃうこともあるので注意。
[ 13: プロファージ遺伝子を含む原核生物ゲノムからの遺伝子予測 ]
メタゲノム遺伝子予測に向けた metagene というソフトウェア (高木先生のところで作った)
– GC% から2連コドン頻度を推定して、予測に利用 (生物種が不明な場合の遺伝子予測に有効)
– Bacteria-Archia の推測を、2連コドン頻度をもとに行う
など。入力の生物種をきにせずに遺伝子を予測できる。完全長でも、700bp にちぎった断片配列でもイケる。200bp とかになると、さすがにしんどい。あんまり短く読んでくるシーケンサだと・・・
で、Bacteria-Archia に加えて Phage も入れた。最新版は MetageneV.
O157 のようなファージ由来の外来性遺伝子に対する感度が向上。
極端ならいいけど、GC% が 50% くらいでどっちつかずだと怖くない? → テストデータを見る限りではうまくいっている。

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