なんか気がつくと blog もすっかり放置なので、たまには最近やってることでも書いておこうと思いました。そういえば沖縄にきて10年ですし。
本業はあいかわらず計算機アーキテクチャというか、custom computing とか reconfigurable computing とよばれることをやっているつもりです。すごく簡単に説明すると、みんなが同じハードウェアのコンピュータを使うんじゃなくて、やりたいことに応じたハードウェアをぱっとその場で手に入れて、より高速でより省電力なシステムを実現する、みたいな研究です。
これ、学生時代にやり始めたころはわりとぶっ飛んでる部分もあったのですが、最近はスパコンの人たちもちょっとずつこっちに流れてきて、そうすると、僕ひとりと学生さん数名でやってる研究室では、予算規模とか実装能力で全然太刀打ちできないので、さすがにしんどいなーと思ったり、まあ僕は僕で他の人のできないところを攻めればいいかーっていうことで、高速データ通信のハードウェアをごりごりいじってみたりしています。もちろん市販の製品を使うので、ものすごい新規性があったりするわけじゃないのですけれども、中身を理解してなくても使えてみんなそうやってるものを深く掘り下げて理解するの、めちゃめちゃ楽しいしそれがないと始まらない楽しい(あるいは、まわりの追随を許さない)こともいろいろあるなーと思っています。
あと、最近は学科のえらい先生にお誘いいただいて、短波海洋レーダーというのをはじめました。僕は無線とか全然わからないのですが、FPGAならちょっとだけわかるので、それでレーダーの送受信機を作っています。1台目は新潟大の屋上に設置した24MHz帯のレーダーで、こちらは新潟大の学生さんのオペレートで新潟の海を見ています。波長12m なのですが、まあ、アンテナはでかい。めっちゃでかい。
沖縄にちょっと来る前に納豆菌のゲノム読むプロジェクトのお手伝いをさせていただいたのですけれど、「まだ人類の他の誰も手にしたことのないデータ」が自分の Mac に入っている、ってめちゃめちゃ面白いな、ってそのときに思いました。納豆、毎日食べてる人は僕以外にも1億人くらいはいそうだけど、納豆菌のゲノム配列ならおれのMacに入ってるぜ、っていう人はそれまでたぶん、ミツ○ンとかタカ○フーズの研究の人で、配列はあるけど社外秘、みたいな感じだったんだと思いますが、それをオープンな形で、しかも当時出たばかりの NGS で読んでいくの、めちゃめちゃ興奮しました。ただ、あの頃の NGS は長いリードがとれないから納豆菌のリピート配列を越えられなかったんじゃ・・・(そのあと鎌田先生が僕のホネをひろってくれました、PacBio のシーケンサすごい。)
あ、それで、すっかり話がそれましたが、昨年から今年にかけては新しく 13.5MHz 帯のレーダーを作らせていただく機会を得ました。静岡は御前崎に設置で、年末は海辺でヘルメットに作業着安全靴着用でひたすらアンテナ組み立てておりました (立てたのは主に学生さんたちです、すごいよみんな。) 御前崎からだと駿河湾のほぼ全域が見える、という目論見ですが、いろいろの事情で送受信機の調整と検査は年明けに延びてしまって、今回はそのために教員二人だけで出張。連日延々といろいろ直したり測定したり議論したりデバッグしたり。
デジタルフィルタもフーリエ変換も交流回路も電波もなにもかも、学生時代に全然わからなくて避けて通ってきたことなんですけども、ちゃんとやっときゃよかった、という気持ちでいっぱいになりつつちょっとずつ勉強していく日々です。めっちゃたのしい。
学生の皆さんは「これ全然わかんないし、なんの役に立つんだよ!」っていうこと、けっこうたくさんあると思うんですよね、でもできれば踏ん張ってほしいし、少なくとも「こういうことがあるのか・・・」ということは覚えておいてほしい、それさえ知ってれば、必要になったときに、なんとかなるんだ、たとえ学生時代に単位が取れなかったとしても!
あと、素粒子とかは全然わかりませんが、CERN でご活躍の先生にお声がけいただいて、加速器のデータ収集システムとかもちょっと始めています。物理ぜんぜんわかんないんですけど、僕がちょっとだけできる計算システムの設計技術が、人類が新たに手に入れる知識の手助けになるのとか、めっちゃかっこいいじゃないですか。
生物も海洋も物理も全然わかんないんですけど、
最高のエンジニアリングの先にある新たな人類の地平線、みたいなの最高にクールだし、そういうのをずっと見ていきたいなあ、というのが、最近ちょっと考えていることです。