納豆mics

納豆菌ゲノムのことについて、今朝の新聞 数紙に記事が載ったようですが、なんか、応用のほうに記事の興味が行っちゃっていて、あまりサイエンスでないので、ちゃんと書いておこうと思います。さまざまな応用について、とか、ねばねば生成のメカニズムそのものの解明は僕らの研究成果ではないので、それが僕らの成果であるように書かれちゃうと、なんだか他の人の成果を横取りしたみたいで若干申し訳ないしね。
さて、僕らのチームは納豆菌のゲノムを読みました。それの何がsignificantだったのか、ということをまとめておきます。
まず、プロジェクトの体制について。
納豆菌から DNA を抽出したりとか、シークエンサー (配列を細切れにして読み取る機械) を走らせたり、というところは、専門の方のご支援をいただきましたが、論文の著者リストを見ればわかる通り、基本的にこのプロジェクトは非常に少人数です。
基本的に実験室での作業は、大学院生の西藤さんという方が4年生から修士1年の春にかけて、ひとりでやりました。本人は、「いやー、たいしたことないですよー」とのことですが、これはいわゆる、優秀かつ謙虚な人というやつです (笑)。彼女が、データ解析も含めてかなりのところまでやって、最終的に配列をつないで遺伝子予測をして、というところから僕がお手伝いしました。ま、僕がいろいろ苦労した点もありますが、基本的には西藤さんが頑張った成果で、1.5 人くらいでやった感じです。
それで、2年弱、実質半年から1年くらいの時間で、全部が終わりました。これは、いわゆる次世代シークエンサーと呼ばれる装置と、さまざまな優秀なソフトウェアとコンピュータのおかげですが。
もっとも、納豆菌はすぐ近縁に、すでにゲノムが解読されている枯草菌という菌があるので、それが大いに参考になった、ということもありますが、少人数で短期間でゲノムが解読できるんだよ、といういい例になったのではないかと思います。
もうひとつは生物学的なこと。
生物学的な発見もいくつかありますが、ひとつ面白いのは、納豆菌が変質して糸を引かなくなるメカニズムが、ゲノム全体の解析で非常に強力に働いていることが明らかになったことです。
以前から、納豆菌にはトランスポゾンと呼ばれる、染色体上を飛び回る遺伝子 (!) が多く見られて、それがねばねば生成に関連するところに飛び込んで遺伝子を壊してしまい、結果として糸を引かなくなる、ということが言われてきており、納豆菌特有のトランスポゾンに関する論文も複数のグループから出ています。
僕らの解析の結果、さらに多くのトランスポゾンが見つかり、しかもわりと頻繁に動いているようだ、ということがわかりました。普通、こういう菌は産業的にも研究的にも、安定しないのであまり使われないのですが、これが連綿と食べられている国、というのはなかなかすごいかもしれません (笑)。
それで、納豆って身体にいいんですか?とか、ナットウキナーゼのこととか、いろいろ僕にきかれるのですが、そのあたりは専門家でないので、正直よくわかりません。だって、僕、基本的には計算機屋ですし。でも、納豆は好きですよ。
take2-tpase.png
↑図は、僕らが見つけた transposon のマップ。けっこうあります。

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