金沢行き

試験監督が終わってから新宿のニコンに寄って帰宅して、慌ただしく準備して23時に上野駅。13番ホームには金沢行き寝台特急「北陸」が入線しており、写真を撮る人たちであふれかえっている。23時3分発。
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夜行列車の廃止は、この何年かでじわじわ進んできて、いよいよ全滅に近い感じなのだけれど、馴染みの土地への列車がなくなるというのは切ない。夜、上野や東京や新宿といったターミナルへ行けば、いつでもそこへ行ける、という、精神的な保険みたいなものがなくなる気分だ。僕にとっては、中央線の急行「アルプス」の廃止がそれだった。故郷へつながっている細い糸を断ち切られる、そんな感覚。
僕は同じ金沢行きの、23時33分発急行「能登」に乗る。こちらは座席で、どちらも3月のダイヤ改正で消える。時刻表の「3月12日まで運転」の文字がせつない。
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昔ながらの寝台車に乗れる機会ももうあとわずかなのだなあ、と思いつつ、最後に「能登」を選んだのは、学生時代からの貧乏性が抜けないというか、それが自分の旅のスタイルとして染みついているからなのか。
いつもは高崎くらいまで起きているのだけれど、あまりの疲労に耐えきれず、熊谷の手前でボックスシートに、カバンを枕に L 字になって気絶。急行列車とはいえ、車両は往年の特急型であり、暖房がしっかり効いて非常に快適。ひと昔前みたいに、冬は窓のすきま風で寒くて眠れない、なんていうこともない。
途中で一度目を覚ましたときは、上越国境のトンネルの中。本当にトンネルを抜けると雪国であり、夜の底が白くなった。スキー場を眺めて眠りに落ち、再び目が覚めるとまだ糸魚川で、ダイヤ通りならもう富山に着く頃合いだが、新潟県内が大雪で1時間くらい遅れている、というアナウンス。外は雪景色。
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朝目が覚めると雪景色で、知らない土地を走っている、という旅ができなくなる日も、そう遠くない気がする。時代の流れといえばそれまでなのかもしれないけど、残念だ。
新幹線や飛行機でびゅーんと行ってしまうには、この国はあまりにも美しすぎる。
あと1ヶ月。
もう一度くらい乗れるかな。
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