つくば藻類・プロティストフォーラム

という名前の研究集会でしゃべってきた。発表はかなり手応えがあり、いろいろな方から質問や、使ってみたい、というコメントをいただいた。
僕以外の2件は病気関係の話。病原性のある生物のゲノムは、ものすごい勢いで解読が進んでいることを実感した。
以下メモ。
[原虫における膜輸送の特殊性と多様性: 赤痢アメーバからの情報発信]
感染研の中野先生。
アメーバ赤痢の感染者5000万人、死亡4〜10万。
国内でも700人。
接着、プロテアーゼの分泌と宿主の認識、ファゴソームでの分解、貪食など、すべて膜輸送としてみることができる。
ゲノムは解読されており、20Mbp くらい。9800遺伝子。
GTPase が小胞の形成や分解に関与。
Rabタンパク質 (Ras superfamily に入る、膜融合タンパク質) の多様化:
多細胞化で組織特異的な輸送系が必要になるので、種類が増える (ゲノムにはたくさんコードされているが、ひとつの細胞で動いているやつは少ない) が、
赤痢アメーバ、テトラヒメナ、ゾウリムシ、トリコモナスではヒトより多く、種特異的なものが多い。こちらは、ゲノムにもたくさんコードされており、発現している種類も多い。
ゲノムサイズは細胞性粘菌なんかと同じくらいなのにね。
Ras ファミリ的にはアメーバ運動するやつらが Rho (アクチン細胞骨格) 遺伝子をいっぱいもっている。
Rab が多様化した連中は、Ras super family 全体が増えているわけではなく、Rab ファミリだけが増えている。特徴としては、
– オルガネラが大きく、丸い
– ファゴサイトーシスが活発で、取り込みが速い
ということがあり、つまり膜輸送が活発。
[ マラリア原虫 SERA 遺伝子ファミリーの系統進化 ]
阪大の有末先生。
年間の感染者数2〜3億、死亡者数100〜300万。ほとんどが子供。
マラリア原虫: 肝細胞で増殖して赤血球に入る。赤血球の中で増えて赤血球をぶっ壊す (ここではじめてヒトの免疫システムにさらされる)。
肝細胞期ワクチン、赤血球期ワクチン、伝搬阻止ワクチン。
SERA ワクチンは SERA タンパク質のSerine repeat のところにくっつく。
SERA タンパク質は遺伝子ファミリを形成しており、protease domain がある (基本的に serine protease だが、cysteine protease なグループもある)。
シゾントからメロゾイトがわっと出てくる過程に関与し、メロゾイトが出てこられないようにすることで感染を抑える。そこの機構は霊長類マラリアと齧歯類マラリアで異なる。
なんども感染しても SERA に対する抗体価が上がらないひとがいる。でも、SERA5 recombinant を注射で入れちゃえば上がって、ワクチンとして使える。臨床実験中。
SERA間での recombination とか gene conversion も起きている模様。

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